公務員と議員が読むべき本『効率が10倍アップする新・知的生産術』続編

 連載企画「この人、この本に注目」では前回、勝間和代さんの
『効率が10倍アップする新・知的生産術』を取りあげました。
この本は示唆に富むので、前回とは違う視点から本書を眺めてみます。

『効率が10倍アップする新・知的生産術』で
勝間さんは、知的生産向上の技術を披露しています。

 このような他人が成功した技術や事例を、読みっぱなし・聞きっぱなし
の方が実に多く、特に地域再生の現場では驚くほど多いこと、
それでは何も身につかないことを前回指摘しました。
 本書の第4章 成果が10倍になるアウトプットの技術
のうち、私がまさに今、体感していることがあります。

技術6)自分の学びを本として出版するー 本を出すと、人生のステージが変わる
 
 人生のステージが、どう変わるのか。
本書213頁で次のように書かれています。

「人脈が、仕事が、情報が、向こうからやってきてくれる」

 『地域再生の罠』を刊行してから本日で25日、
多くの方から当ブログを使い、コンタクトを頂いています。例えば、

①地域再生とは異分野で、著書を数冊おもちの著名な方々が、
 ある企画の意見を求める。あるいは彼ら団体での講演を求める。
②地域再生の成功事例として有名な地域の方々が、
 実は全く成功していないから、私が次作でその実情を描くことを求める。

上記の①は、「人脈が、仕事が、向こうからやってきてくれた」と言えます。
②は、「情報が、向こうからやってきてくれた」例です。

 著書をお持ちでない方、他人事とは思わず
①を「相手側」から注目してみて下さい。すなわち、
著書を数冊もつ著名な方々(いわゆる専門家)が
自分の専門とは異分野の本『地域再生の罠』を精力的に読み、感銘したら
「読みっぱなしにせず、直ぐ私にコンタクトして意見や講演を求める」
権威主義とは無縁の意欲的な姿勢に注目してほしいのです。

 何人の方とは実際にお会いしました。皆、拙著を2冊とも持参して
くれたことに驚きました。彼らは、780円の新書『地域再生の罠』に
感銘を受けたら、2500円の単行本『日本版スローシティ』も購入して、
更に私から学びたいと言ってくれるのです。

 この体感から私が学んだことを纏めましょう。

1)「私のような権威とは無縁な若輩に、自分からコンタクトして学ぶ」
 意欲的で立派な姿勢は、異分野の専門家や逸材にしてみれば
 それは「成長するために当然」のことなのです。

2)自分の専門分野の権威だけに目を向ける「たこつぼ研究」は
 成長を阻害します。成長するには、異分野の本も精力的に読みましょう。

  限られた時間と予算の中、どういう本を購入して読むべきか
 すなわち「選本術」が問われます。そこで次回は、小飼弾さんの
 『新書がベスト』を取りあげて「選本術」を考えてみましょう。 



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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公務員と議員が読むべき本:7 勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』書評

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
(2007/12/14)
勝間 和代

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 今回から最終回まで5回連続で、地域再生とは「異分野」の本と
その著者に学びます。

 地域再生・地域づくりを「異分野」に学ぶ理由と重要性を考えてみましょう。
それは、地域再生・地域づくりの「専門家の問題点」から導くことができます。
専門家の問題点を端的に示すキーワードは、次の通りです。

 脱「排他的な タコ壺研究」→ 地域づくりに「コラボレーション」を! 

これは『地域再生の罠』173頁の次部分に集約されています。

 海外で建築家として認められるためには芸術や思想状況も知っていなければならない。
 つまり、文化人でなければならない。
 

 そう、日本の土建工学者(土木、建築、都市工学)は、それぞれの
狭い研究分野(タコ壺)の中でのみ通用する「技術」力を発揮することには
熱心だけれども、文化や人の思想については、知ろうともしていない。

 このような「排他的なタコ壺研究」の本を、もし
まちづくりとは違う分野で刊行すれば、容赦なく「くそ本」と烙印を押されます。

 パレートの法則は、本にも適用されるようです。
本の8割は「くそ本」と指摘される勝間和代さんと小飼弾さんの著作を
今回と次回で紹介します。

講演を開くこと、聞くことが目的化してはいませんか?

 勝間和代さんは近年、著作を量産しています。私はその殆どを読んでいますが
次に注目したい。

 読書や講演を終えて、貴重な助言をすぐに実行できる人は5%未満。
実行を挫折せず、持続できる者はその5人に1人。つまり、全体の1%。
成功の条件は、有益な「知識」を得たら、すぐに「実行」して、持続させて
「定着」させること。こんな解りやすいことを実践するだけで上位1%に食い込める。


『効率が10倍アップする新・知的生産術』272頁には、
この主張が次のように公式化されています。

  成果=知識×実行割合×定着率
 
 勝間さんは、「実行割合」が5%未満と低すぎること、定着率も20%と低いこと
を問題視しています。これと全く同じことが、地域再生の世界でも見られます。

 地域再生に取り組む地域では、よく講演を開きます。
彼らの多くは「講演を聞きっぱなし」にしています。
 なぜでしょうか。

 一番多い理由は「講演会を定例で開く」からだと思います。
例えば、新春恒例の講演会、毎月など定期開催の講演会などです。
私に依頼のあった講演会も約半分は、この種のものです。

 私の印象では、講演を「開くこと、聞くこと」が目的化しているようです。
目的化するほど、他の地域と横並びで講師は選ばれる。
 まちづくりは、事例も講師も他地域と横並びで選ばれるのです。



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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公務員と議員が読むべき本 第6回 藻谷浩介『ニッポンの地域力』書評

実測!ニッポンの地域力実測!ニッポンの地域力
(2007/09)
藻谷 浩介

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 独立行政法人から民営化された日本政策投資銀行の職員、藻谷浩介さんの本です。
藻谷さんの講演と書籍のスタイルは、私的に言えば「ID野球の地域づくり版」です。

 ID野球と言えば、ヤクルトや阪神の監督だった野村克也さんです。
野村監督と藻谷さんは、顔や体型など外見も似ていますね。

 野村さんのID野球の逸話を一つ。
野村さんがヤクルト監督時代の池山選手は、ぶんぶん丸と異名があるほど
長打もあるが変化球にからきし弱くて空振りが非常に多い荒削りな打者でした。
 野村監督は池山評を本人に伝わるのを承知でマスコミへ次のように「ぼやく」のです。

「池山は時速150㎞の速球に目を奪われて、速球待っては変化球を空振りしよる。
 データを見れば変化球が多く、速球は見せ球のボールなんや」と。

 まちづくり関係者は、「データを考えない、目立つことに目を奪われる池山選手」に
喩えることができます。他都市の施策を実情を考えないで
真似をしては空振り続きの地域づくり関係者の前に、野村監督に外見と思考が良く似た
藻谷さんが講演で現れる。藻谷さんは、こう言う。

「皆さんは、目立つことに目を奪われて妄信しているが、データ的にそれは正しくなく、
事実はこうです」と。

 銀行員である藻谷さんの「データの収集と分析」は、ID野球よりも緻密です。
本質やデータを考えもしなかった「まちづくり関係者」は池山選手と同じように
「目から鱗です」と言う。
 両者の言うことは同じでも、行動は全く違います。

池山選手は、聞きっぱなしにせず実行に移した(その結果、成績を上げた)。
まちづくり関係者の殆どは、聞きっぱなし。


藻谷さんは「パーソナル・ブランディング」の達人?


 藻谷さんは講演で「私は年間400回以上の講演を全国でこなしている者」
「講演は累積3000回以上」「訪問都市は全国市町村の99%を制覇」と
自己紹介(自慢?)しています。

 著書でも、やはり上記と全く同じ文言で自慢しています。
この自慢を、講演で聞かされた地域づくり関係者から次のような話を伺った。

「年間400回、累積3000回、99%制覇」と数字で自身を誇る様は、まるで
「付き合った女性の数を自慢」している感じ。
でも、その数字は凄すぎる。私(の地域)だけが、
藻谷さんの講演を聞いていない(訪問してもらえていない)と、他に後れをとる。


 そう、地域づくり関係者は横並び意識が非常に強い。
私が思うに、藻谷さんが繰り返し数字を強調して自慢(自己紹介)する本当の意図は、
戦略的な「パーソナル・ブランディング」ではないだろうか?

「年間400回、累積3000回、99%制覇」と言えば、
「付き合った女性の数を自慢」しているような嫌悪感を与えることもある。
しかし、この数字は誰の目にも「偉業」と映る。
嫌悪感など簡単に吹き飛ばす破壊力がある。
 
 このような戦略的な「パーソナル・ブランディング」は、
観光地など地域づくりにも有効です。すなわち、嫌悪感を吹き飛ばすような
「お国自慢」を全国へ発信しよう。そして
ご当地の魅力を、私だけが知らないと遅れをとると感じさせよう。


 さて、「年間400回、累積3000回」を誇る藻谷さんの講演を
私は聞いたことが無い。 一方、何度も聞いた方もいて、その方曰く
「毎回、佐世保の商店街を、成功事例として紹介しているが、
藻谷さんの講演を聞いて、活性化に成功した地域を聞いたことはない」と。

(これを詳細に考察するサイトがある 藻谷理論の批判的検討


 これは重要な問題提起だ。
 殆どの地域が藻谷さんの講演を聞いたことがあるのに、
活性化した地域は殆どないのは何故だろうか? 
理由は2つ考えられる。

①講演を「聞きっぱなし」、何も行動にうつさない。これが圧倒的に多い。

②助言を行動にうつしたいが、具体的にどうしていいか解らない。
 つまり、「データ的に変化球が多いから、速球に惑わされず変化球を狙いましょう」
 と助言されても、どの球種に絞って、どのように打つべきか解らない。
 具体には、球種を地域資源に置き換え、打つ方法を活用方法に置き換えると
 良さそうだとは解る。そこで、同じ地域資源を活用する
 前例を探して上辺を真似するが、失敗する。

 この②については、拙著『地域再生の罠』で指摘しています。

①については次回、勝間和代さんの本を例に考察する予定です。



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公務員と議員が読むべき本 第5回 齋藤一成『100円商店街の魔法』書評

100円商店街の魔法100円商店街の魔法
(2010/04/08)
齋藤 一成

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 著者の斎藤一成さんは地方公務員(山形県新庄市職員)ですが、本書は随所に斎藤さんの
「人との交流を大切にする人間的な温かさ」が溢れていて、とても共感できます。
 
 そう、衰退した新庄商店街が(少しは)活性化した本質は、「交流」にあります
客の少ない商店街が、月に一度のイベント時に「100円商品」を置くと、話題性と安さから
「一時的に集客」できますが、これだけでは「100円ショップ」と何も変わりません。
 むしろ、安売が利益を圧迫したり、後に定価では売れなくなるリスク
を秘めています。
 
 斎藤さんは商店主に「当イベントを機に、顧客と”会話・交流”しよう」と訴えています。
すなわち”100円商品は顧客と商店主の間に「交流を創出」する魔法”と言いたいのですが、
読者(特に商店街のオヤジ)の多くは、この主張本質を理解できないと私は危惧します。
つまり「うちの商店街も100円商品を置けば成功する」と誤解しないか心配しています。

 本書は他にも読み所が多い。本日は参院選翌日なので、地方公務員である斎藤一成さん
「ご自身の失敗談」と、「国への苦言」に注目して紹介したい。

1)ご自身の失敗談 

 本書は、ご自身の失敗談から始まります。
1章:齋藤さんが新庄市の活性化施策として、最初に取り組んだ「ミニFM局」です。
 事業の「立ち上げ、起業」は僅か3人で、会議の場所も無いから公共施設の休憩場を利用して
会合を重ねた苦労話に脱帽です。
 軌道に乗り世間から注目されると、金も人も集まる。人が集まりメンバーが増えると、
当初目的から逸脱した行為が生まれる。
 逸脱者(つまり、軌道に乗ってから加入した新メンバー)が多勢を占めると、
苦労した立ち上げメンバーは次のように告げられた。

15頁:齋藤さんは、別の団体としてやってもらったほうがイイんじゃないですか?
 
 この失敗談は地域再生の団体設立にも、会社設立にも、よくある話ですね。

2)国への苦言

①40頁:まちづくりを考える際に、しばしば行われる安直な「先進事例の報告を聞く」
「先行事例の現場を視察する」という、あのウンザリするほど陳腐な手法を
 彼らは経験したことがない。そして自分で考えることをやめた人々によって広がる
「猿真似まちづくり」を密かに冷笑しているのかもしれない。

②194頁:議員の先生方をはじめ、商工会議所、商工会、商店街の方々などなど、優に
百を超える数の視察団体を受け入れた。面白いのは、今述べた順番が後ろに来れば来るほど、
 地元に帰った後に100円商店街が起動する率が高いということだ。(中略)
 単なる出張予算の消化のための、はなから事業に取り組む気持ちのない「視察(観光?)」
申し込みは、そろそろご遠慮いただきたいところだ。

③92頁:100円商店街を考案するにあたり、日本各地の商店街活性化事業を調べたが、
 まったく使い物にならなかった。従来の活性化事業の根底に流れる考え方は、
 六十年前からまったく進化していなからだ。

④93頁:商店街にただ人を集まるためだけに、行政から大量の補助金を受け取って、
 さまざまなソフト事業に投下しているのが全国各地の商店街活性化事業の姿である。
 「もったいない」を通り超して、もはや「無駄」と言わざるをえない。

⑤225頁:机上で「中心市街地の活性化に関する法律(中活法)」などというシロモノを
 つくったところで、商店街は活性化しない。


 引用①と②は、地域再生の弊害「成功事例模倣」の温床である
「視察の無為性」を主張している。
 引用③~⑤は、中心市街地活性化や商店街活性化における
「補助金事業の無為性」を語っている。

 以上5つのコメントには、何も目新しいことはない。
もう誰もが知っていることを地方公務員が正直に言っただけ。
この真実を地方公務員が言うこと、商店街活性化を司る経済産業省関連のアドバイザーである
斎藤氏が言うことに意義がある。

 参院選で国民は、消費税増税にNoをつきつけた。
みんなの党のメッセージ「消費税増税の前に、やることは沢山あるだろ」
に国民は共感した。やることの一つが
「無為な補助金事業」の大胆な見直しです。



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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公務員と議員が読むべき本 第4回 木村俊昭『「できない」を「できる!」に変える』書評

「できない」を「できる!」に変える「できない」を「できる!」に変える
(2010/01/13)
木村俊昭

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 今回から3回連続で、公務員および公益法人職員の本を紹介します。
本日は、農林水産省の職員「木村俊昭」さんの本を紹介します。

『「できない」を「できる!」に変える』って木村さんのビジョン、素晴らしいですね!

 拙著『地域再生の罠』は、「できること(簡単に模倣できる成功事例)」を探して
一生懸命に模倣する地域ほど衰退する罠を描き、地域再生に必要なビジョンを示しました。
 木村さんと私のビジョンは、使う言葉が違うだけで、本質は同じなので共感します。 

 また、私が講演でよく言うことがあり、それと同じことを木村さんが
『「できない」を「できる!」に変える』150頁で次のように言っている点にも共感します。

 人口5万人で2万世帯のまちなのに、わずか10社程度の会社のために、
まちをあげて特産品を売ったところで、まち全体が潤うわけがありません。
 
 
 私の講演では、会社を商店街と置き換えて説明しています。
東京の江東区が僅か20世帯にすぎない商店街のレトロ化事業に
なんと3億円弱の補助金(つまり税金)を使うという話があります。
 
 木村さんの言葉を借りれば、江東区の人口は約42万人で
世帯数は20万強の街なのに、その1万分の1の僅か20世帯の
商店街のために、約3億円の税金を使ったところで、まちに住む
99.9%の市民は全く豊かになれません。
 
 しかも、この商店街活性化の目的を区役所に尋ねたところ
「観光化して、観光客を呼び込む」ことだそうです。地元市民が
日常の買い物や交流の拠点としようとは全く考えていないのです。

 計画策定の手順を聞いてみると、土建屋コンサルタントに調査を依頼して、
レトロ化というコンセプトを作る。
 その成功事例で有名な大分県の豊後高田へ施設へ行き、
成功事例に模倣をする…

 このような「地元市民のことを考えないで、土建屋の言うことを聞き
遠くにある成功事例を模倣する地域づくり」の弊害を
『地域再生の罠』で指摘しています。



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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プロフィール

地域再生プランナー

Author:地域再生プランナー
久繁哲之介の見識が当ブログ、
以下の本でご覧頂けます。

『地域再生の罠』ちくま新書
『日本版スローシティ』学陽書房
『コミュニティが顧客を連れてくる~愛される店・地域のつくり方』
『商店街再生の罠』ちくま新書

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