地域活性化に必要な「連携」~義務で形式的に繋がる連携vs人が自然に心で繋がる連携(コミュニティ)

 若者バカ者まちづくりネットワークの武部寛子さんのお店「地域体感カフェ五感」が
宇和島に7月1日オープンしました。 おめでとうございます!
 
 オープンの経緯と様子を地元紙の愛媛新聞が次のように報じています。
http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20110705/news20110705059.html

『地域再生の罠』39頁で指摘したように、メディアは 地域再生に資する施設の開業を
「紋切り型表現で、表面だけを」報道しがちで、その弊害は大きい。

 この愛媛新聞記事も「紋切り型表現で、表面だけを」報道している。
読者の約9割を占める”一般読者”に「一度、行ってみようか!」と感じさせて
「一見の消費」を喚起する目的に限定すれば、この記述は何ら問題はない。むしろ
当事者は「報道(という形で宣伝)してくれて感謝!」しているだろう。

 しかし、地域再生に少しでも縁のある関係者は、この種の報道を誤解して、
報道された成功事例を表面的・形式的に模倣して失敗することが多い。
 以下に、その核心部を引用しよう。

 地域の企業や企業組合など約20社が手を携えた(中略)
コンサルタント会社「創造社」が地元企業や農家、漁業者らに声を掛け実現した。



 まちづくり専門家やメディアが多用する「地域再生は連携こそ最も重要」との
紋切り型表現を見事に踏襲している。 しかも、会社や組合など「組織と組織の連携」だと
強調するので、本当は「個人の熱意が、人の繋がり」を育んだ大切な過程が感じられない。

 こういう報道を見聞した地域の多くが「組織と組織の連携」を構築しようと
役所やコンサルタント会社を事務局にして「xx活性化協議会」等の「組織」を
乱立するのだが、地域再生の効果は一向に聞こえてこない。これを
私は「義務で形式的に繋がる連携の限界」と定義する。

 こんな背景を知る地域再生関係者が愛媛新聞記事を読むと、宇和島も他地域と同様
「創造社ってコンサル会社が事務局で~」と誤解するかもしれない。
以上に述べた幾つかの誤解をまとめて解消しておきたい。

 創造社は、武部寛子さんが宇和島を活性化しようと設立した会社。
会社区分が「コンサル」なのは、活性化の事業が、地域体感カフェ五感の運営
だけでなく「海の恋人まつり」などイベント支援などにおよぶからだろう。

 武部寛子さんは地元を活性化する為、大都市でのキャリアを捨てて
宇和島に戻ってきた。 熱意もキャリア(才能)も高く、気取らず明るく
バカになれる若者」武部さんと接していると私は、むしょうに応援したくなる。

 そんな武部さんは当然、地元で多くの人から愛され、応援されている。
愛媛新聞記事を久繁的に換言すれば「地域の企業約20社が手を携えた」背景には、
武部さんを核とする「年齢や気持ちの若い人が、バカになって」自分のことより
地域や他者のことを大切にしたい・応援したい「個人の情・熱意」があり、それが
「人の繋がり」という連携を育んだ。 このメディアに見えない過程を含めた連携を
私は「人が自然に心で繋がる連携(コミュニティ)の効果」と定義する。


 以上は、地域再生の為に、武部さんなど「若者バカ者」を応援すべき!と
やや感情的に説明したが、以下は第二部として論理的に考察したい。


 地域体感カフェ五感の価値は、「人の繋がり(コミュニティ)」を高める効果に加え、
地域経済循環率を高める効果がある。地域経済循環率は『日本版スローシティ』104頁で
詳解したように、地元での消費が地元に循環する割合のこと。例えば地方都市の場合
全国チェーン店では約15%にすぎない(循環するのは非正規社員の人件費くらい)。
これが地元資本店では約45%に上がる(雇用や資源の地元活用度が上がる)。
更に地元食材を多用するスローフード店なら、70%以上も可能となる。

 地域体感カフェ五感は、地元食材を主に使うし、2名の社員を雇用し、
社長の武部さんは利益を地元で仲間との交流や遊びに散財するらしいから
地域経済循環率70%は確実に超えていると思う。

 この「地域経済循環率」という指標は、地方都市の活性化にすごく重要だが
ほとんど認識されず、売上高(月商)が重視されて地方は衰退している。

 例えば、全国チェーン店は月商100あっても、循環率は15にすぎない。一方、 
地域体感カフェ五感のようなスロー・フード店は、ゆったり寛げちゃうから回転率が悪く
月商は全国チェーン店の4割としても、循環率は28以上で、全国チェーン店の約2倍ある。
 地域経済循環率が解り、地元を愛する地権者なら、賃料が少し安くても
テナントにスロー・フード店を迎えて、地域全体の活性化を期待する。

 さて、地方都市の再開発ビルや商店街(の地権者)は、どちらに店を貸しているか?
全国チェーン店、しかも業態がファスト・フードや消費者金融や英会話等に偏っている。
なぜなら、地権者は公益(地域活性化)より私益を重視して、高い家賃を払える所に貸したい。
高い賃料を払っても地方に出店したいテナントは、月商の高い全国チェーン特定業態に限られる。
(人口の少ない小都市は、そもそも全国チェーンは出店しないので空き店舗状態が続く)


 以上の観点から私は、「人の繋がり(コミュニティ)」の創出という感情的な取組と
「地域経済循環率」向上という論理的な取組を、バランスよく統合的に進めることで
地域再生は実現すると思う(ワークライフバランスと似ていると思う)。

 この両面のバランスをとりながら、地域再生を推進できる担い手は
自分のこと(私益)より、地域や他者のこと(公益)を大切にできる(応援できる)
「年齢や気持ちの若い、バカになれる」人!と、私は確信している。


若者バカ者まちづくりネットワーク」主宰 久繁哲之介

「地域体感カフェ五感」店内(写真提供:武部寛子さん)
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久繁哲之介の見識が当ブログ、
以下の本でご覧頂けます。

『地域再生の罠』ちくま新書
『日本版スローシティ』学陽書房
『コミュニティが顧客を連れてくる~愛される店・地域のつくり方』
『商店街再生の罠』ちくま新書

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