「私益より公益を優先する人が、報われる社会を創る」 ~テンプレートとベストプラクティスを猿真似する会社(地域)は衰退する

 前回エントリ 脱「無縁社会」へ商店主の取組:第3話『北海道恵庭市の山本和代さん』
で「恵庭市商店街を再生する戦略」を練っていて、
そのうち実践する予定だとお話しましたが、その舞台裏を明かします。

 恵庭市役所の商店街担当職員(以後「Bさん」と言う)に、私は
次提案のうち、提案①までを示して、準備と協力を求めました。

 恵庭商店街の再生コンセプト:山本さんの交流拠点的な音楽店と「花の街」の二つを
恵庭の戦略的な地域資源と位置づける。
 再生イメージ:恵庭は「花と屋外音楽」の相乗効果で愛される都市(商店街)になる。
そのための具体的な施策として、以下を提案する。

提案① 私のブログ等を使い、山本さんの御店の知名度・イメージをあげる。
提案② 商店街イベントとして、屋外(路上)コンサートを年に数回実施。
提案③ 商店街はイベント時以外も音楽を流して「音楽の商店街」というイメージを育てる。
提案④ 恵庭商店街の深刻な課題である「空き店舗」に、音楽愛好家が好み営む
    洒落た飲食店・雑貨店・ヘアサロン等を誘致

 施策実施後の効果を物語的に話すと、花を目当てに来た来訪者の「耳」に音楽が流れる。
同様に、屋外音楽を目当てに来た来訪者の「目」に花が見える。
音楽と花を観賞した来訪者は、恵庭商店街の飲食店で余韻を楽しむ。
 地元の若者は、集客力の高い屋外コンサートでの演奏に憧れて、
山本さんの御店1階で楽器を購入し、2階で練習に励む。
練習前後は、周辺の飲食店でメンバーとスローフードを媒介に情報交換を楽しむ。
あるいは音楽フリークが営む雑貨店・ヘアサロンで交流(消費)する。

注)屋外コンサートによる活性化事例は拙著『日本版スローシティ』で次の3つを紹介。
柏市はストリート・ミュージシャン、神戸市旧居留地と湯布院は屋外コンサート。

 私がBさんに①までしか提案しなかった理由は、いきなり全体像を示すと
「Bさんや商店街の男性陣に”反対あるいは尻込み”」されるから。

 私は他都市の講演で何度も同じような経験をしてきた。すなわち、
私益より公益を優先する御店を地域資源と位置づけて相乗効果を生む施策を提案した後、
「私の提案は、あくまでも参考で最後は、資源に何を選び、どう育て活用するかは
“自分達で考えてください”」と講演で話す。すると聴衆の男性陣の多くは
私(他人)の提案の粗を探すばかりで、自分の頭で何かを考えたり提案できず
次のように対案なき反対・不満の声をあげる。

「なぜ、その店だけが得する施策をやるのか、全く論理的でないし、不公平だ」

 この反対・不満の声に私は、いつもこう応える。

 私益より公益を優先する人が、報われる社会(地域)を創りたい。
これが私の地域再生ビジョンであり使命でもある。事実、
公益を優先する人が報われる地域は、他人や地域全体に配慮できる心の優しい市民が育ち、
街中に人が集まり、商店売上や雇用創出に繋がる。一方、
 衰退する地域ほど”私益ばかり追求する者が街中・商店街に居座って”
”私益より公益を優先して行動を起こす若者が不遇されて流出”している」


 さて、恵庭の話に戻ろう。Bさんに私は提案①まで話した翌日
Bさんから次主旨のメールを頂きました。

「コンサルから、空店舗対策事業の成功事例が信州にあると聞いた。3月に視察したいが
久繁先生の御意見は?」

 Bさんが陥る罠は、拙著『地域再生の罠』で詳解しています。この
「地域再生の罠」を昨年のベストセラー『ストーリーとしての競争戦略(東洋経済新報社2010)』
という500頁以上の分厚い本に、経営的に指摘した至言が“前書きⅧ頁”にあるので紹介しよう。

「一見して効き目がありそうな“テンプレートやベストプラクティス”を探してきて、
自社に流用するという発想は、むしろ戦略ストーリーを破壊してしまう」


この「会社経営戦略の罠」を「地域再生の罠」に置き換えると、次のようになります。

「一見して効き目がありそうな“専門家など権威が推奨するモデル事業や成功事例”を
他地域から探してきて、自地域に猿真似して流用する発想は、
自地域が誇るべき文化・資源を破壊してしまう」



 ベストプラクティスとは「成功事例」ですが、専門家が推奨する地域再生の
成功事例の殆どは一時的な成功にすぎないか、全く成功していません。

 テンプレートとは、「自分の頭で考えることを放棄する怠惰な者に提供される雛型」
のことで、地域再生では「補助金の付いたモデル事業」がその典型です。

 つまり、自分の頭で考えることを放棄した怠惰な会社幹部・地域再生担当者ほど、
よそで成功した「テンプレートやベストプラクティスを探してきて、
自社・自地域に流用・猿真似したがります。
 その怠惰な習性は、コンサルの餌食にされます。すなわち、経営コンサルは会社役員に、
土建屋コンサルは地方自治体に「テンプレートとベストプラクティス」を探してきて、
「これを真似すれば成功する」と(誰にでも同じような)提案で仕事を得ようとします。

 Bさん、地方公務員の皆さん、そして中小企業の商店主(社長)さん、
コンサルの餌食とならないよう、自店や自地域を破壊しないよう注意しましょう。
 あなたの御店・地域に、魅力的な資源が埋もれていないか見つめ直して下さい。

 その第一歩として、私が描いた恵庭市の「地域資源を育てて活用する戦略」を参考に、
自店・自地域の資源を育み活かす戦略を「ご自分の頭で考えて」ください。



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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『地域再生の罠』ちくま新書
『日本版スローシティ』学陽書房
『コミュニティが顧客を連れてくる~愛される店・地域のつくり方』
『商店街再生の罠』ちくま新書

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