脱「無縁社会」へ商店主の取組:第3話『北海道恵庭市の山本和代さん』

 脱「無縁社会」へ商店主の取組 第3話は
北海道恵庭市で「楽器・音楽CDの販売、演奏スタジオ」の御店を営む山本和代さんです。

 私は昨年12月12日、講演で恵庭市を訪問しました。現地の方から、
山本さんの御店『音の博信堂』(写真1)を紹介して頂きました。

 山本さんの御店のビジネスは当初、物販(楽器・音楽CDの販売)だけで
利益が出ていました。しかし、楽器演奏者は激減し、
「音楽はネットのダウンロードで調達、あるいは買わずに借りる」時代となり、
山本さんのお店の販売額・利益は下降し続けます。

 山本さんはシャッターを閉めるか、ビジネス・モデルを変える必要に迫られます。
山本さんは後者を選びます。市民に「演奏を楽しむ場所(スタジオ)」を提供し、
音楽を楽しむ文化を育んだ(楽器演奏者を増やした)後、楽器を販売していく戦略です。

これは、かねてから私が提案している以下戦略の好例です。

  物を売りたいなら、それが必要とされる「文化、物語」の創出が先!

 山本さんは2008年、御店の半分(店舗2階)を「演奏スタジオ」に改造しました。
改造費に行政支援はありません。
 山本さんは「市民に演奏を楽しむ場所(スタジオ)を提供したい」という理念から、
スタジオ使用料は1時間500円に設定。更に会員になれば2割引きの1時間400円です。
 この安い料金体系は公共施設レベルで、はっきり言って「利益は出ない」。
この戦略も、私が提唱する以下戦略に相通じるものです。

 『地域や御店の全体的な豊かさ(利益)を創出する”戦略的赤字施設”を創ろう』
関連記事: 交流と賑わいを育む”戦略的赤字施設”鹿児島市「マルヤガーデンズ」

 私が講演で、「戦略的赤字施設を創ろう」と提案すると、
「それで全体の利益が出るのか? テンプレートとベストプラクティスを示せ」等と
”テンプレートとベストプラクティスに依存するオヤジ連中”から散々こきおろされます。でも

「スタジオ(戦略的赤字施設)」設置後、山本さんの店は売上・利益は「上向いて」います。

 女性ひとりで経営する小さな楽器店が、戦略的赤字施設を設置して、
お店全体の売上・利益は向上させた秘密を紹介しよう。
 皆さん、山本さんの示唆に富む次のお話から秘密を感じとってみて下さい。

「以前お客様から楽器を購入しても続かないという声を幾つも頂きました。
例えば、演奏の方法・練習の場所・上手くなった後のバンドを組む相手など、
楽器購入前の悩みは尽きません。
 そんなお客様の声(悩み)に応える為にも「練習場所、音楽フリークが出会い交流する場所」
としてのスタジオを開設して、演奏方法助言や演奏メンバー仲介もしています。
 物(楽器)の販売はネットや郊外大型店に価格では、とても敵わない(安くできない)が、
こういうお客様とのコミュニケーション・交流の相乗効果として、楽器販売は上向きです。」


 山本さんの「市民が演奏を楽しみ交流できる場所(スタジオ)を提供したい」という理念は
クチコミで広まり、スタジオ利用会員はスタジオ設置から2年余りで既に200人を超えた。
 
 このように「音楽を楽しむ文化を育んだ(楽器演奏者を増やした)」からこそ、
山本さんの御店は楽器販売が上向いている
のです。
 この重要な戦略を今一度、確認しておきましょう。

「物を売りたいなら、それが必要とされる“文化、物語の創出が先”!」


 山本さんが「育んだ文化、物語」の財産は、まだあります。
写真2は、山本さんのスタジオで演奏を楽しむ地元の高校一年生4人組です。
 楽しそうですね!

 この高校生4人組をはじめ200人以上の若い会員とその仲間達が、空店舗問題や集客低迷が
深刻な恵庭市の商店街の一角に「定期的かつ持続的に集まる」集客力は、
下手な商店街イベントより格段に集客持続力が高く、
恵庭の商店街・街にとっては、貴重な地域資源となります。
 
 一人の女性(山本さん)が、「私益より公益を優先する御店(場所)」の創出に挑んだ成果として、
恵庭市は新たに二つの魅力的な地域資源を手にしました。
①音楽を楽しむ文化
②衰退する商店街の一角(山本さんの御店)に、若者が集い交流する拠点

 恵庭市は、既に魅力的な地域資源を有しています。例えば、
街中に点在する大学と専門学校の学生:数千人。花と水の都。

 恵庭市はこれまで残念ながら、こういう資源を全く活用できていないから、
街も商店街も衰退しています。
 一方、山本さんの「スタジオ会員獲得→音楽文化を育む」戦略には、
「数千人の学生+高校生」という地域資源の活用が視野に入っていたと思います。

 恵庭市は、まちづくり・商店街づくりの発想を
「旧来型」から「地域資源を育成・活用型」へ切り替えれば、必ず再生できます。

 私は「私益より公益を優先する場所」の創出に挑んだ山本さんを応援したい。
なぜなら『地域再生の罠』7つのビジョンで真っ先に掲げたように
「私益より公益を優先する人が報われる社会(地域)を創る」ことは私の使命だから。

 そういう訳で、山本さんが育んだ地域資源と、元からある地域資源を連携して
活用する「恵庭市商店街を再生する戦略」を練っていて、そのうち実践する予定です。

 それを次のエントリ『私益より公益を優先する人が、報われる社会(地域)を創る』
~テンプレートとベストプラクティスを猿真似する会社(地域)は衰退する』
で紹介します。
  http://hisa21k.blog2.fc2.com/blog-entry-73.html


写真1 恵庭市商店街にある山本和代さんの御店「音の博信堂」
恵庭山本外観1

写真2 山本さんの御店2階のスタジオで演奏を楽しむ高校一年生4人組
恵庭山本スタジオ



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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