母校「基町高校」が京都駅ビルのコピー作品にされ、土建工学者の視察が殺到

 母校の広島市立 基町高校は、校舎改築を機に
土建工学者や建築オタクの間で、視察や議論の絶えない有名な箱物になった。

 ぼろいけど思い出の詰まった母校が、土建工学者お得意の
スクラップ&ビルドによって、公立校なのに「京都駅ビル」の外観ソックリに
変わりはてた話をしよう。
 
 ある著名な御高齢建築家かつ土建工学者の講演を拝聴した折、
彼は某ビルのことを「あれはボクの作品・・・」と仰った。
私の前列にいた男性二人組はそれを聞いて、次の会話を交わしていた。

「きもーぃ、いい歳こいて“ボク”だって」
「自分を”ボク”っていう オヤジは オタクだよ。 そう、“建築オタク”」

 私は「健全なオタク」は肯定・応援する。 なぜなら、
「健全なオタク」は、趣味・趣向は自分(達)だけで「私的」に楽しみ、けして
「他人、公」には迷惑をかけないからだ。 これを「健全オタク論」と定義したい。

 この定義によれば、「ボク(私)の作品」を「都市、公」に展示・誇示したい
建築オタクは、健全ではない。 このように、健全でないオタクを私は肯定しない。

 なぜなら、健全でない土建工学者の「ボクの作品」は、他者の生活・心や
地域の文化・風土を壊すから。 地域固有の文化・風土を壊された地域は
「画一化」が進み、それが地域衰退に繋がるのだ。

 1997年竣工の京都駅ビルは賛否両論の大論争となった。
否定論者である市民団体が実施したアンケートでは
「市民・観光者の心を壊し、地域の文化を壊す」など否定意見が全体の79%を占めた
とマスコミはこぞって報道した。
(否定論者の作成するアンケートは、否定を誘導しがちなので、割り引いて考える必要はある)

 京都駅ビルの設計者、原広司さんは建築家としても土建工学者としても超一流である。
京都駅ビルという「作品」を古都の玄関口に展示したことで、それが賛否両論の大論争と
なったことで、彼の知名度は良くも悪くも上昇し、建築オタクに、原信奉者が確実に増えた。

 それは私のよく知る広島市職員にも見てとれた。京都駅ビル論争の最中、
広島市で私の母校「広島市立基町高校」の建て替え話が浮上した。
広島市は設計者に原広司さんを選んだ。 これを誇りにする広島市職員は少なくない。

 歴史を省みると、公益を担う権力者が「自らの誇りやプライド、つまり私益」
の為だけに愚行を犯し、大切な多くが失われたことを我々、特に広島市民は心に刻んでいる。

 しかし、失われるものが「心や地域文化」など目に見えない場合、いとも簡単に
愚行は繰り返される。こうして、古くてボロいけど思い出が詰まった愛着ある母校は
「京都駅ビルのような、まるで公立高校には見えない」器に
スクラップ&ビルドされた。
 こういうスクラップ&ビルドを、土建工学者は「地域再生」と言うらしい。

地域再生の専門家は「心ある文化人」でなければならない

 母校の立地は広島市の街中、広島城の隣にあり、グラウンド・ゼロ(爆心地)
至近の場所にある。建築家・家主の趣味で建てられた奇抜な建物は、かねてより
地元では問題視されていた。そんな最中に造られた「京都駅ビルのような高校校舎」は
広島市内で、京都駅ビルのような大論争をよんだ。

 論点は京都駅ビルも母校も同じです。
賛成者の視点は主に「器、建物単体」でみて、デザインも機能も素晴らしいと言う。
建築オタク向け雑誌などが、母校の建物をそのように褒めそやす。

 否定者の視点は主に「地域、都市全体」でみて、京都の場合は「古都の玄関口」に
広島の場合は「平和都市のグラウンド・ゼロ近く」に、土建工学者(建築オタク)が
「ボクの作品」を展示・誇示する我が儘「私益」は許されない、と言う。

 この賛否を評価するのに冒頭で示した「健全オタク論」が有効だろう。
趣味・趣向は自分だけで「私的」に楽しみ、けして「他人、公」には
迷惑をかけない「心」を問うてみたい。

 健全なオタクは、「心も文化も無い“フィギュア(模型)”」は
自分好みに造り上げるが、「心も文化もある“生身の人”」には
「私の趣味・趣向を押しつける無礼・我が儘」はおよばない。
 
 同様に、健全な建築オタクは、公益を損なう「ボクの作品」を
展示・誇示する場は、研究室内の模型に止めることができる「心、自制心」がある。

 「心ある生身の市民が生活し、文化ある都市」で、公益を損なう
「ボクの作品」を展示・誇示するのは絶対に許容されない。

 建築家・土建工学者が「ボクの作品」の誇示しようとするほど、
「人の心、地域の文化」は破壊される。だが困ったことに、
超一流の建築家・土建工学者ほど「ボクの作品」の誇示欲「私益」は高い。 

 拙著『地域再生の罠』では、ベストセラー『構造と力』の著者である
浅田彰氏の次文言「建築家は、文化人でなければならない」を引用して、
地域再生は「心の再生」と同義だと強調した。

 そう、地域再生の専門家は
「心ある文化人でなければならない」のです。


写真1  基町高校:校舎内
基町なか

写真2  基町高校:外観
基町そと

写真3  桜満開の広島城と基町高校
広島城



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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