交流と賑わいを育む”戦略的赤字施設”鹿児島市「マルヤガーデンズ」

 『地域再生の罠』の第8章(提言2)で私は、
「地域全体の利益へ”戦略的赤字施設”を創る」ことを提案しています。

 戦略的赤字施設をイメージ・具体化するのに最も適切な事例がスポーツクラブなので、
8章タイトルは「街中の低未利用地に交流を促すスポーツクラブを創る」としました。

 鹿児島市の天文館に今年4月にオープンした「マルヤガーデンズ」は、まさに私がイメージする
”戦略的赤字施設(注)”としてのコンセプトと特徴をもっています。

(注)本稿の意図は「マルヤガーデンズ」の赤字を予測するものではなく、多くの方に
「戦略赤字施設=マルヤガーデンズ」に共感して頂き、応援・支援を呼びかけることにあります。


 「マルヤガーデンズ」に私が注目する理由を先ず説明しましょう。
2009年5月、人口60万人強の鹿児島市で最も賑わう天文館から三越が撤退し、
鹿児島市内に残る百貨店は地場の山形屋だけとなりました。

『地域再生の罠』第1章では、百貨店など大型商業施設が撤退した地方都市は、
跡地利用が何年も決まらず、酷く衰退していく構図を示し、私は次の提言を示しました。
「地方都市に、百貨店という業態は成立しえない。百貨店に依存しない地域再生を!」 

 そんな状況下「マルヤガーデンズ」は三越撤退後、わずか11か月後という早さで、かつ
百貨店業態とは全く異なるコンセプトと特徴を掲げて開業したこと、更に
この素晴らしい決断者が、玉川恵さんという女性であることに私は注目したのです。

 12月13日、講演で鹿児島市に訪れました。講演を主催した鹿児島経済同友会様ならびに
玉川恵様のご配慮により、マルヤガーデンズ(写真①)を視察させて頂きました。

 マルヤガーデンズのコンセプトを一言で要約すると
「人と人が、もっと自由につながりあえる場所」です。

 館内を歩いてみると、イベントスペース(写真②)や休憩スペース(写真③)など
「利益が出ないと一目で解る”公益空間=人が繋がる場所”」を創る仕組みが随所にあります。
 詳細はマルヤガーデンズの以下WEBを参照して頂くとして
http://www.maruya-gardens.com/
  
 私が一番、心を打たれた仕組みを紹介しよう。
館内で地元産野菜を直売するイベントを開くのだが、売り手が
「社会参加が困難な若者(俗に、ひきこもり等と言う)」である点が興味深い。

 社会参加が困難な若者が、社会復帰する為の活動として
農家で実習する話はよく耳にする。 直ぐに結果を求めない農村の
おばあちゃん達と一緒に農作業をする過程で、若者達は少しずつ農村という
スローな場所や人(スローシティ)には心を開き、適応し始める。
 
 だが、農村(スローシティ)で社会参加に自信をもちかけた若者も、
直ぐに結果を求める都市部(ファストシティ)での社会参加には、なかなか適応できない。

 マルヤガーデンズでの野菜直売イベントは、都市部にスローシティを創る仕組みがある。

1)若者は野菜という「物」だけを売るのではなく、自身の心を開いてくれた
 「地域や人(スローシティ)」を愛しているから、その地域や人の名前を自然に大声で連呼して
 大勢の顧客と向き合う。
 
2)顧客側は単に新鮮な野菜を買うだけではなく、社会参加が困難な若者が
 スローシティで経験したであろう物語に惹かれて野菜を買い、
 若者に物語への感謝や激励の声をかける。
 
3)マルヤガーデンズには、社会参加が困難な若者の姿に感動したという顧客の声が届く。
 そんな声・クチコミが、マルヤガーデンズのファン数と売上高に寄与する。

4)天文館(鹿児島で最も賑わう地域)は、マルヤガーデンズの集客効果で更に賑わう。

 この仕組みは、マルヤガーデンズを核に4者を繋ぐもので、4者とも
すなわち地域全体が豊かになれるように見えるが、深刻な課題がある。それは
 天文館という地価の高い場所で、非営利団体に格安の賃貸料でイベントスペースを貸す
マルヤガーデンズは、3)の効果では利益を確保できず、赤字が見込まれる
ことだ。
 
 マルヤガーデンズのように、赤字覚悟で
地域全体の豊かさ(利益)を創出する施設を”戦略的赤字施設”
と私は位置付けて、
戦略的赤字施設を支援する提言を『地域再生の罠』第9章で示しています。


写真①マルヤガーデンズ外観(緑化された外壁に注目)
マルヤガーデン外

写真②マルヤガーデンズ館内 イベント・スペース(屋上も緑化)
maruya1.jpg

写真③マルヤガーデンズ館内 休憩スペース
maruya2.jpg



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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