里山資本主義のウソ ~ 失敗を成功と粉飾 ~ これぞ『地域再生の罠』

 ベストセラー『里山資本主義』(NHK広島取材班・藻谷浩介の共著)を 妄信 して、
成功事例と紹介された真庭市へ、公費=税金 で視察に行き、
補助金=税金 を使ったバイオマス事業を推進する議員や自治体が増えている。

 そんな議員や自治体を 「うすっぺら~。こんなレベルの人が何期も当選…(詳細はクリック)
等と、批判・嘲笑する 市民の声も非常に多く耳に入る。

 さて「どちらが正しいのか? 『里山資本主義』の内容は正しいのか?」を検証しよう。
 
論点1 著者がNHKの『里山資本主義』は、NHKテレビ番組で過剰に宣伝しすぎ
 (例:昨日の「おはよう日本」)。 公平中立を自称するNHKが、自著を自局番組で過剰に宣伝
 する行為は、かなり不適切!  この過剰宣伝も大問題だが、論点2は深刻な問題である。

論点2 『里山資本主義』は国内外の成功事例を、今後日本の理想像であるかの如く、実に
 美しく描いている。 しかし真実は、同書が「美しい理想と描く成功事例」の
 ほとんどは問題だらけな事例
だ。 事実上、破綻している「失敗事例」も少なくない


 論点2は、拙著『地域再生の罠』で指摘した構図と全く同じである。すなわち
実は成功していない問題だらけな事例を、不都合な点は全て隠蔽して、まるで
バラ色のように美しい成功事例として紹介する”エセ専門家と新聞テレビ”の弊害


 この弊害は大きな副作用を生む。つまり「実は成功してない問題だらけの事例に、
視察ラッシュが発生し、虚実な成功事例を模倣する施策に各地で莫大な補助金が付くが、
表面的に模倣した地域の殆どは無残に失敗して、税金=補助金の莫大な浪費を生む
。」

この弊害と副作用を抑制する為、里山資本主義のウソを以下の手順で明らかにしていきたい。

1) 著者の「ウソ=重要な事実を隠蔽した情報操作」で、失敗を成功と粉飾した事例と手法
2) 知識も良識もある「正統派の専門家」と、知名度は高い「ニセ専門家」の違い
3) 新聞テレビ(特にNHK)が「エセ専門家」を代弁者に利用する悪質な「世論誘導」
  


1) 『里山資本主義』の「ウソ=重要な事実を隠蔽した情報操作」

資料1 私の地元である広島の中国新聞2012年5月30日記事 (詳細はクリック)   

 岡山県は29日、建材メーカーの銘建工業(真庭市)が製造販売した木質ペレットの焼却灰から1キログラム当たり最大2600ベクレルの放射性セシウム137を検出したと発表した。(中略) 銘建工業は北欧などの木材から集成材を生産。(中略) 北欧の木材を中心に チェルノブイリ原発事故の影響があるのではないか」としている。

 銘建工業の木質ペレットは『里山資本主義』で何度も紹介される核となる事例である。同書は
里山資本主義を「里山=地元の資源を自給自足する原価0円の経済再生」と喧伝している。
 しかし、核となる事例の資源(木材)は地元「里山の資本(資源)」でない。 真実は、北欧など
外国からの輸入品」。              ⇒ ウソ=重要な事実の隠蔽」1

 同書は、木質ペレットを「原発に代わる、クリーンなエネルギー」とも喧伝しているが、
真実は「放射性セシウムを垂れ流している」。     ⇒ ウソ=重要な事実の隠蔽」2

 自給自足も、原価0円も、クリーンなエネルギーも、全て「ウソ」



2)知識も良識も高い正統派の専門家vs知名度は高いエセ専門家

 里山がテーマの『里山資本主義』共著者に、なぜNHKは藻谷浩介を選んだのか?
答えを導く前提として「専門家(NHK等ジャーナリズムを含む)は2種類いる」ことに留意したい。

 知識も良識も高い「正統派の専門家」と、 知名度は高い「エセ専門家」である。
里山をテーマに「専門知識と良識の高さ」を基準に専門家を選ぶと、次2人が適切だと思う。

 実務家では『里山再生』など、里山に関する複数の著書がある「田中淳夫」さん。
学者では、東工大 名誉教授の「久保田宏」さんが最高権威と評価されている。
田中さんと久保田さんは、里山資本主義へ次の苦言を呈している。

資料2 田中淳夫さんブログ 「里山資本主義」は可能? バイオマス発電の虚実

(前略)問題は、ここ(真庭市)で作られる集成材の材料は、ほとんど外材なのである。 (中略) 里山(近隣地域)の産物とは言えないし、地産地消でもない (中略)  『里山資本主義』では、ペレット等バイオマス発電が、まるで理想的に展開しているかのように紹介されているが、実はドイツやオーストリアのバイオマス発電所が、次々に破綻したり経営不振にあえぐ事実を隠している

 『里山資本主義』の海外事例は、まるで理想的に展開しているように紹介されているが、
「破綻したり経営不振にあえぐ事実を隠している」。  ⇒ 「ウソ=重要な事実の隠蔽」3


資料3 久保田宏 東工大名誉教授レポート 「誤解を招く里山生活でのエネルギーの自給」  

(前略)3頁『幻想に終わった「バイオマスタウン構想」での税金の無駄遣い』(中略)「バイオマスタウン」の殆ど全てが破綻したと総務省から異例の厳しい評価を受けた。

 バイオマス事業は「国内事例も、実は殆ど全てが破綻していて、 税金の無駄遣い」と評価されている。   ⇒「ウソ=重要な事実の隠蔽」4

資料4 未利用材バイオマス発電  補助金4重取り (WEDGE2012年12月号)

 
 以上の考察より、NHK広島取材班が『里山資本主義』の共著者=代弁者に、
「正統派の専門家」でなく「エセ専門家」を選んだ理由が浮かび上がる。

理由1)共著者の役割は、NHKが主張したい「ウソ=重要な事実を隠蔽」への協力だから。

理由2)専門知識も良識も高い「正統派の専門家(田中淳夫さん、久保田宏さん)」は
   「事実を隠蔽する=視聴者・読者を騙す」代弁役を拒否、真実を言うから。

理由3)ウソの代弁者は、専門知識と良識は不要で、知名度の高さだけが求められる。つまり、
    知名度の高い著名人が、ウソを代弁してこそ、視聴者・読者は事実と錯覚するから。

参考記事 新聞テレビの「タダで取材、発言一部だけ切り取る情報操作」お断り宣言



3)NHKが「エセ専門家」を代弁者に利用する悪質な「世論誘導」

『里山資本主義』が犯した「ウソ=重要な事実の隠蔽」の数々は非常に悪質である。
とりわけ「放射性セシウムを垂れ流す」事実の隠蔽は、今の日本では、国民への背信行為だ。

 中国新聞記事は『里山資本主義』刊行(2013年7月)1年以上も前の2012年5月に報道された
事実を見逃してはいけない。 NHK広島取材班が、まさか地元新聞の記事を知らない訳がない。
 
 にも関わらず、なぜNHKはウソを積み重ねた内容の『里山資本主義』を刊行したのか?
”新しい・美しい世論(ベストセラー)を作りたい、その為の「ウソは付き物」”と考えているのだろう。

 不法行為を犯した藻谷浩介にとっても、美しい世論の代弁者になる役は、失墜したイメージを
回復する絶好のチャンス! 両者の思惑は「美しい世論を作りたい」事で一致したのだろう。

 藻谷浩介が「死ね」と他者ブログに書き込んだ不法行為の判決が2011年9月(資料5)、
藻谷浩介の不法行為を知りながら、2013年7月『里山資本主義』を刊行したNHKの罪は重い。

 NHKって倫理規定ないのかな? 犯罪者でも藻谷浩介は利用 vs ホリエモンは友人さえ
出演拒否するNHKの手口はコチラ ホリエモンのブログ 「NHKが取材依頼をしてきたのだが。」


資料5  「デフレの正体」藻谷浩介さんに賠償命令 J-CASTニュース2011年09月22日 

「デフレの正体」藻谷浩介さんに賠償命令 ブログコメントで名誉毀損: 
 日本政策投資銀行参事役の藻谷浩介さん(47)がブログに侮辱的なコメントを書き込んだとして、札幌市の男性が60万円の損害賠償を求めた訴訟で、札幌地裁は2011年9月21日、名誉毀損を認めて
藻谷さんに10万円の支払いを命じたことが分かった。 男性がブログで藻谷さんの著書「デフレの正体」を批評したことに対し、藻谷さんは「早く死んで子供に財産を残せ」とのコメントを書き込んでいた。石橋俊一裁判官は、「コメントは学問上の論評を超え、ことさら男性を侮辱するもので 不法行為を成立する」と判決理由を述べた。


 補足資料 『里山資本主義』 藻谷浩介が学術講演に遅刻して大暴れ



まとめ) 『地域再生の罠』の弊害・失敗を繰り返さない為に 

 情報にお墨付きを与える役割を担う「専門家(ジャーナリズムを含む)は2種類いる」ことに
留意し、いずれであるかを選別することは、情報過多時代に必須のスキルである。

 知識も良識も高い「正統派の専門家」と、知名度は高い「エセ専門家」の違いは
「実は成功していない問題だらけな事例」の説明(報道)に顕著に表れる。

 正統派の専門家は、問題をきちんと説明できるし、問題が多すぎる事例は
「失敗」と指摘できる知的誠実さと勇気を兼ね備えている。失敗と指摘すれば
「敵ができる・嫌われる」が、失敗こそ「学びの宝庫=成功への近道」と心得ているのだ。

 知名度は高い「エセ専門家」は「嫌われるリスクは取れない、美しい世論を作りたい」ので
失敗事例を、バラ色のように美しい成功事例と説明(報道)する「ウソ」をつける。


 この「ウソ」の弊害を拙著『地域再生の罠』で解き明かしたが、里山資本主義のウソは、
まさに『地域再生の罠』で指摘した構図そのものである。この弊害を繰り返さない為
『地域再生の罠』の構図を再掲し、論考を終わりたい。

「実は成功していない問題だらけな事例を、不都合な点は全て隠蔽して、まるで
バラ色のように美しい成功事例として紹介する”エセ専門家と新聞テレビ”の弊害」

 この弊害は大きな副作用をもたらす。つまり「実は成功してない問題だらけな事例に
視察ラッシュが発生し、虚実な成功事例を模倣する施策に各地で莫大な補助金が付くが、
表面的に模倣した地域の殆どは無残に失敗して、税金=補助金の莫大な浪費を生む」のだ。


 
     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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久繁哲之介の見識が当ブログ、
以下の本でご覧頂けます。

『地域再生の罠』ちくま新書
『日本版スローシティ』学陽書房
『コミュニティが顧客を連れてくる~愛される店・地域のつくり方』
『競わない地方創生~人口急減の真実』時事通信社
『商店街再生の罠』ちくま新書

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