路面電車=LRTを活用した「まちづくり」~産経新聞に『地域再生の罠』掲載

 産経新聞文化部は「新交通システム」に関する連載を始め、産経新聞20面に
久繁哲之介の主張「路面電車(LRT)を活用した地域再生論」が掲載されています。

 産経新聞が「路面電車(LRT)を有効活用して市民が豊かになるには?」という企画で、
私を取材相手に選んだ理由を聞いてみると、記事の狙いを含めて次のように話してくれた。

1)成功を求めるなら、失敗事例にこそ学ぶべき。岐阜の路面電車廃線から
 何を学ぶべきかを聞きたい。
2)路面電車(LRT)の成功と言われる富山市はJR路線を引き継いだもので、LRT利用者の
 見込は事前に明らかだった。一方、松江市が2年後にLRTを新規導入するが、現在の
 車利用者が LRTを利用するかなど松江市LRTの展望を聞きたい。
3)『地域再生の罠』には以上の要素と都市が網羅されている。
 以上1~3を踏まえて、路面電車(LRT)を有効活用して市民が豊かになるには、
 どうすべきか意見を聞きたい。


論点1:路面電車の失敗(撤退)事例から学ぶか?
 
 岐阜市が2005年3月に路面電車を廃線とした主な理由を整理しましょう。
①市民(の一部)と市役所が、現在より効率的な「車優先社会」を望んだ。
②市役所の縦割主義により各施策が連動していない。

 あなたは街中へ通勤あるいは遊びに行く時、公共交通とマイカー、どちらを利用したい?

 この問いに、首都圏や関西圏の方は殆どが「当然、公共交通に決まってるだろ」と
お答えになるだろう。だが、人口40万人強の岐阜市を含む地方都市では同じ問いに
「できれば、マイカーを利用したい」と答える。

 この「できれば」の条件は何だろうか。おそらく次の2点だと思う。
①職場や繁華街の近くに格安な駐車場がある。
②道路が渋滞しないで、職場や繁華街へ(公共交通より)早くアクセスできる。

 首都圏や関西圏では、いずれの条件も満たすことができない。
だから、殆どの方が「公共交通を使うのが当然」とお答えになる。

 一方、地方都市だと、いずれの条件も「現在は満たされて」いて、
近年になるほど、その条件が改善?されている。

 なぜ地方都市では、2つの条件とも近年ほど「改善」されたのか。

①地価が下げ止まらず、街中に低未利用地が増え続けている。低未利用地の利用は
 地価が上昇して土地利用者が出現するのを待つ「暫定の駐車場」が過半を占める。
 その結果、繁華街・職場の近くに格安の駐車場を確保できるようになった。
  岐阜市の場合、繁華街の月極駐車場料金は、1990年頃だと月3万円位だったが
 路面電車が撤退する2005年頃には、月6千円位にまで下がった。この値下げを機に
 通勤手段を「公共交通(路面電車)からマイカーに変えた」人が増えたという。

②過剰な道路整備事業が今なお続き、マイカーの利用価値は向上している。
 マイカー利用者の「効率(速さ)重視」思考は、どんどんエスカレートして
 岐阜市では「路面電車を撤去して、道路専用車線を増やそう」と。


論点2:地方都市のLRT導入に考慮すべきこと

 地方都市のLRT導入に考慮すべきは、この2つの条件を
マイカー利用には「改悪」、公共交通(LRT)利用には「改善」する方向に
誘導することが必要です。では、具体的にどうすればよいかを提言します。

①街中の低未利用地を「暫定駐車場」にさせない仕組みを創る。

 街中に土地を持つ個々の地権者による「暫定の駐車場」化を放置すると、駐車場だらけの
地方都市街中は魅力を更に失います。この弊害は更に、格安駐車場の大量供給に繋がり、
マイカー利用者を増やします。
 ここで、2012年にLRTを新規導入する松江市の展望をお答えしましょう。
松江市の街中も「駐車場だらけ」です。これを放置したままのLRT新規導入では
現在のマイカー利用者は公共交通(LRT)に移行しないはずです。
 
 街中の低未利用地を「暫定駐車場」にさせない仕組みを創るには、どうすればよいか。
『地域再生の罠』提言②では、市民の交流を促すスポーツクラブを創り、関連消費を
誘発する仕組みを示しています。私は、自分の提言こそベストとは言いません。
皆でアイデアを出し、それをコラボして「地域独自の仕組み」を創ってほしいです。


②「道路はもう造らない」、街中に「車を進入させない」仕組みを創る。

 『地域再生の罠』読者から「久繁さんはコンパクトシティ反対論者ですか?」
という声を頂きました。答えは「No」です。コンパクトシティは是非、推進したいと願う
賛成論者です。ただ「現在のやり方・考え方」は賛成できません。その理由と弊害を
『地域再生の罠』では「西欧の安易な模倣、縦割主義」等のキーワードで説明しました。

 では、どうすべきか。ポイントだけ示します。

 まず、コンパクトシティ地域(例えば、街中の半径数百m)は車進入禁止にします。
そして、その地域は①で示したような「市民の交流空間」を創ります。
 路面電車(LRT)も低未利用地も、市民が交流して豊かになる手段と位置づけて
活用してほしいです。

③「効率(ファスト)重視」な街造りを改め「スローシティ」へ

 市役所や市民の思考が「効率(ファスト)重視」のままでは、
市民のLRT利用も進まないし、まちに「交流空間を創る仕組み」も支持されない。
 
 実家のある広島市は、路面電車が複数系統ある「路面電車のまち」でもあります。
広島駅から繁華街の紙屋町までの所要時間は、車だと渋滞しなければ5分ですが
路面電車だと約3倍の15分もかかります。

 なぜなら、路面電車は大都市の地下鉄などと違い電停(鉄道の駅に相当)が短い。
街中だと100m先に次の電停が見える。
路面電車は電停に停まっては、乗客が一人ずつ小銭箱に乗車料金を入れて降りる。

 つまり、路面電車は停留回数は多く、停留時間も長い。これに拒否反応を示す人は
駐車場料金が高くてもマイカー通勤を続けています。
 
 また、時間に余裕のある高齢者や中高年者でさえ、訪問先が電停から100m以上の場合は
タクシーを利用する方が圧倒的に多い。
 
 そう、地方都市の中高年齢者は僅か100mでも歩くことを避けたがる。
若者でさえ100m先の銀行まで歩けば、手数料無しでお金をおろせるのに
歩くのが嫌で、手数料を払ってでも目の前のコンビニを利用する者が少なくない。
こういう光景を見慣れてしまうと「歩いて暮らせる街づくり」の実現は難しいと感じる。

 このように、政令指定都市の広島市であっても、路面電車(LRT)拒否派が多いのです。
ここで、新聞記者から最後の問いかけに答えましょう。日本で
路面電車(LRT)を有効活用して市民が豊かになるには、どうすべきか?

現在の「効率(ファスト)重視」なライフスタイルや街造りを改め
「スローシティ」へ舵をきることを望んでいます。



     若者バカ者まちづくりネットワーク 主宰  地域再生プランナー 久繁哲之介

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『地域再生の罠』ちくま新書
『日本版スローシティ』学陽書房
『コミュニティが顧客を連れてくる~愛される店・地域のつくり方』
『商店街再生の罠』ちくま新書

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