リニア新幹線開業で中間駅地域が活性化するってホントなの?

 「リニア新幹線開業で甲府など中間駅地域は活性化するか?」をテーマに
朝日新聞の取材を受け、こういう記事になりました。
 朝日新聞記事:リニア停車駅の足元

 私は自分の主張を話す時(特にマスコミに話す時)には、いつも
全体像を示して「メリットとデメリットの両方」を指摘します。

 しかし、マスコミ(新聞記事やテレビのコメント)は、いつも
私が話した「片方の極端な意見だけ」を編集して報道します。
 こういう経験から得ることは沢山あります。 例えば、次2点です。
1.マスコミ報道の偏向ぶりが解る
2.物事の「裏(見えない側面)」を考える習慣が定着する


 新幹線や高速道路の開業前は、メリットだけを煽る報道が特に多い。
しかし、開業後の地方都市は(特に大都市に近くなる地方都市)は全てが
「メリットよりデメリットが圧倒的に大きく」衰退しています。

 私は「新幹線整備、高速道路整備」そのものを否定するつもりは無いが
「デメリット(裏側)にも目を向けて、事前に対応策を講じる」重要性を指摘したい。

 新幹線開通を例に、中間駅地域は「メリット(流入)よりデメリット(流出)が大きく」
かつ時間が経過すると「流入<流出」の差が大きくなる構図
を考察しよう。

流入は主に「観光」、新幹線通勤など「新規居住」です。
流出は主に「地元市民の消費」、支店削減など「雇用」です。

 流入メリットは「新幹線開業後すぐ」に出現しますが、数年後には萎みます。
商業施設も開業直後は「マスコミが話題」にするので集客は凄いが、
1~2年後には来客が激減します。新幹線開業後の観光と移住も、これと同じです。
この傾向を私は拙著『日本版スローシティ』で「話題性確認消費」と定義しました。

 流出デメリットは逆に、じわじわと浸透していきます。
なぜなら「東京で本物を手軽に消費(体験)できる」楽しさを知った消費者は、
東京を中途半端に模倣した地元商業施設に満足できなくなる
からです。
 
 これ(消費価値)は「クチコミでドンドン浸透」していきます。
消費の持続力を決めるのは「マスコミ」でなく「クチコミ」です。

 このように「流入<流出」の差は「時間が経過するほど大きくなる」つまり
大都市に近くなる地方都市は「時間が経過するほど衰退していく」
のが実情です。
 以上の背景から朝日新聞記事の次結論が導かれます。
「リニア新幹線開業で東京に近くなる甲府は2段階で衰退するだろう」 

 では、甲府は事前にどのような措置を講じるべきか? 
拙著『地域再生の罠』で「宇都宮(岐阜)の消費が、東京(名古屋)に流出」する
構図と「大都市に近い宇都宮(岐阜)の再生施策」を提示
しています。


 次の論点です。流入と流出の大きさは、それぞれ新幹線の利便性に比例します。
これは新幹線駅の立地(種類)に左右されます。
 新幹線駅の立地(種類)は次3つ、上ほど利用者の利便性が高い。

1)ターミナル駅併設型 
 例:東京駅、名古屋駅、広島駅

2)ローカル駅併設型 = 新xx駅型 
 例:新横浜駅、新大阪駅、新青森駅

3)単独駅型 = JRを含む全ての鉄道駅に併設されない「不便な新駅」 
 例:本庄早稲田駅、安中榛名駅


 朝日新聞記事で話題の山梨県甲府市に設置されるリニア駅は「3型」を
「地元関係者がJRに要請」している事に私は非常に驚いています。

 県庁所在都市の新幹線駅が「利用者に最も不便で、効果が最も低い3型」を選ぶ
正当な理由も前例も見当たらない。

 甲府市のリニア駅は、甲府駅から8kmも離れています。リニアで甲府新駅に着いても、
タクシーやバスに乗り換えて甲府市街地へ行く所要時間は、現行のスーパーあずさ
や高速バスで甲府駅へ行くのと大差がない。一方、リニア+バス(タクシー)の運賃は
スーパーあずさや高速バスより、かなり高くなるだろう。

 かように3型は「利用者の利便性が極めて悪い」ので、前例の利用度も芳しくない。
3型の失敗例「長野新幹線の安中榛名駅」は東京からの距離が甲府と同じ約120km。
群馬県の安中榛名駅のH22年度1日平均乗車人数は僅か252人にすぎない。

 以上2つの事例は「利用者、競合との競争・連携」を全く配慮できていない。
では何故「利用者に最も不便で、効果が最も低い3型」が
複数の地方都市で選ばれるのか?
「利用者、競合との競争・連携」は配慮せれず、何に配慮されているのか?

地元土建関係者の意向(3型は、駅建設費やアクセス道路建設費が大きい)や
地元商業関係者の意向(3型は、消費流出が小さいと錯覚されている)等…

 つまり、利用者不在の新幹線整備は「市民不在まちづくり」の構図と同じ
まちづくり(と称する)関係者たちは、実は自分の私益ばかり考えていて、
「地域全体(公益)、顧客、競合」への配慮に欠けています。

 この解決策として私は『日本版スローシティ』『地域再生の罠』で一貫して
市民が戦略3Cから問い直す「まちづくり、地域活性化」を提言
しています。 

注)戦略3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3Cを
 把握してから、戦略や計画を立案すべきと説く「ビジネスの基本原理」です。

 
若者バカ者まちづくりネットワーク」主宰 地域再生プランナー 久繁哲之介

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(2010/07/07)
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久繁哲之介の講演会 11/23~東京都新宿

 11月23日(水・祝)14時から、東京の新宿で公開講演会を開催します。
NPO支援の一環として、私は幾つかのNPOでアドバイザーを務めていますが
当講演会の主催は、その一つ「NPOストリートデザイン研究機構」です。

 講演会プログラムは次4人が順に、各自1時間ほど話します。
1) 福田英子氏(コモン・ニジェール代表理事) 
2) 白濱雅也氏(アーティスト)
3) 佐藤弘喜氏(千葉工業大学教授)      
4) 久繁哲之介

 4人の講演が終了する18:30から約1時間、懇親パーティを開きます。 

 当講演会は「NPOストリートデザイン研究機構」設立一周年記念行事として
開催します。有料ですが、どなたでも参加できます。

 詳細は以下の「ストリートデザイン研究機構Web」で御確認ください。
  ストリートデザイン研究機構Web

 NPOストリートデザイン研究機構会員以外の方も是非ご参加ください。
あなたがパーティで孤立しないよう、私が温かくおもてなし致します。

 久繁哲之介と交流したい方、上記先生方の御話を聞きたい方、是非ご参加ください!


若者バカ者まちづくりネットワーク」主宰 地域再生プランナー 久繁哲之介

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奈良市の「市民公開講座」兼「職員養成塾」で12月20日(火)に講演します

 奈良市は『1ドル50円時代を生き抜く日本経済』著者の浜矩子さんと
私、久繁哲之介の連続講演会を「職員養成塾」兼「市民公開講座」として開催します。

 奈良市の「市民公開講座」は、奈良市役所「職員養成塾」の一貫です。
職員と市民が同じ講座を受講する効果は(私の解釈では)次のとおりです。

1.講座2回を1回に統合するので、コストと手間暇が半減する
2.市民の目線・感覚を自治体職員が解る
3.自治体職員の実態・資質を市民が解る
4.縦割主義の打破に繋がる
 

 私は、特に4の「縦割主義の打破」に期待しています。なぜなら、
役所には部門間で統合・連携できる事、統合した方が効果的な事が沢山あります。
 事実、役所の殆どは未だ、自治体職員対象に人事部が所管する「職員研修」と
市民対象に市民部などが所管する「市民公開講座」を分離しています。
 
 こういう観点から私は、奈良市の取組を評価しています。
取組詳細は奈良市が発表した以下の記者会見報道資料で御確認ください。

  奈良市「記者会見 報道資料」

奈良の皆さん、12月20日(火)18時15分からの講演に是非お越しください!


若者バカ者まちづくりネットワーク」主宰 地域再生プランナー 久繁哲之介

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プロフィール

地域再生プランナー

Author:地域再生プランナー
久繁哲之介の見識が当ブログ、
以下の本でご覧頂けます。

『地域再生の罠』ちくま新書
『日本版スローシティ』学陽書房
『コミュニティが顧客を連れてくる~愛される店・地域のつくり方』
『商店街再生の罠』ちくま新書

講演・執筆ご依頼は以下クリックして下さい。 電話は禁止!

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久繁哲之介の本
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